今日に限って届けてほしいなんて、どういうことかなぁ。

 私は不思議に思いつつ、三年生の階への階段を上がっていた。

 出雲くんにLIMEを送ったのが、三時間目の終わったあとだ。

『出雲くんのノート、私のバッグに入ってたよ。今日、いるんじゃない?』

 私の教科書に紛れて、出雲くんの数学ノートが入っていた。

 数学は一日に一回はあることが多いし、今日の授業で必要な可能性は高かった。

『ああ、午後に数学あるから、良かったら届けてくれない?』

 でも返信を見て、私は不思議に思った。

 だって同居は秘密なのだ。

 幼馴染なのも、出雲くんを好きな女の子などはあまり知らないと思う。

 そのために学年が違う私は、あまり出雲くんに会いに行ったりしなかったのに。

 ノートを届けに行ったら、どうして私が先輩の出雲くんの持ち物を持っていて、しかも届けに行くのかという疑問を持たれてしまうのでは?

 つまり同居がバレてしまう可能性はあるのでは……?

 そう思ったのに、出雲くんからの返事はこれだ。

 でも出雲くんがいいなら、私に断る理由はない。

 届けるのくらい昼休みにサッと行けるし。

『わかった。昼休みになったら行くね』

 よってそう送った。

 それで今、私の教室より一階上にある出雲くんの教室に向かっている。