約三十分が経って、ようやくIZUが「じゃあ、そろそろ」と発言した。

 私は心底ほっとした。

 改めて音を立てないように気をつけながら、終わるのを待つ。

「今日も聞いてくれてさんきゅな。次回は明後日、プロジェクタ・フィーチャー。新曲やっからな! 絶対見てくれよ!」

 多分、画面の中ではコメントが大量に流れているのだろう。

 あまり詳しくないものの、何回かVtoberの配信は見たことがあるから、想像はつく。

 それでやっと、おしまいになった。

「ふーっ……」

 ガチャ、と音を立ててヘッドセットがデスクに置かれる。

 ……私のデスクに。

 IZU、あ、もう出雲くん。

 出雲くんは満足そうなため息をついた。

「やれやれ。ま、なんとか終わったわ」

「お、……つかれ、さまです」

 私はおそるおそる、やっと言葉を発した。

 しかしその言葉は出雲くんに軽くにらまれた。

「お前なぁ、配信中に入ってくるなよ。音、入っちまったじゃねぇか」

 じとっとした目で見られるけれど、私にも一応、正当な理由はある。

「だ、だってここ、私の部屋だよ!? どうして配信なんて……」

 確かに配信中に入ってしまったのはいけなかった。

 でも私が怒られるのは、ちょっと理不尽。

 だってここは、まぎれもなく私の部屋なのだから。

 出雲くんの部屋は別に、きちんとある。

 なのにどうして私の部屋なんかで、配信をしているというのか。

 そりゃあ自分の部屋だと思ってなにも気にせず、ドアを開けて入ろうとするだろう。