数年後─︎─︎……

「千紘〜! おめでとう!」
「あ、朝陽っ!? 迎えにきてくれたの?」
 今日は大学の卒業式。
 この前、入ったばかりだと思ったのに月日が経つの早いなぁ。
「うん、今日は休みだからね。謝恩会まで時間あるでしょ?」
「まぁ、確かにあるけど……まだ菜央と亜樹に会ってないんだよねー」
「そっか、俺近くのコンビニで待ってるよ。いろいろ終わったら連絡して」
 朝陽は来た道を戻って行った。
 そういえばあの後、菜央や亜樹と山内さんの後押しもあり私と朝陽は付き合い始めた。
 菜央には「良かったね」と言ってもらえて、
 亜樹も「おめでとう」と言って貰えた。

でも、別れた直後にはいろいろあって……。
“人気者の亜樹を振って、違う男と付き合った”
という噂がたったからか結構イジワルされたりした。
 まぁ、当たり前だし仕方ないなと思ってたのに……
『俺から別れを告げたんだ、今まで千紘に無理言って付き合ってもらってたんだ。俺は……千紘が笑っててくれたらそれでいいからさ。イジワルするなら、俺にしてよ』
 亜樹がそう言ってくれて、すぐに収束した。そんな姿がカッコよく見えたのかまたまた人気は上昇した。
「おーい!千紘〜」
「あれ? 2人一緒だったの?」
 過去に耽っていると、探していた本人達がやってきた。
「菜央も亜樹も……どこいたの? 探してたのに」
「私たち、席が近かったから」
 なるほど……そういうことか。まぁ、ホールはデカいし見つからないかぁ。
「そうだ! 千紘にご報告です!」
「……?」
「俺、彼女出来たんだー」
「えっ! 本当!? おめでとう!」
 亜樹、彼女できたんだ。良かった……亜樹には本当に幸せになってほしいって思ってたから嬉しい。
「ありがとう……あ、千紘も婚約おめでとう」
「あ、ありがとうっ」
 私は、先月……記念日に朝陽にプロポーズされて婚約した。
「遂に千紘も人妻かぁ〜」
「人妻って……言い方……」
 入籍はしたけど、まだ結婚式はしないんだけどね。
「今日は、朝陽さん来てないの? いつもなら迎え来てるじゃん」
「あ、さっきまで一緒にいたけど……コンビニで待ってるって言ってた」
 連絡、しなきゃ……。
「そうなの? じゃあ連絡しなよ、後で私らは謝恩会でも会えるし……朝陽さん待ってるんじゃない?」
「そ、そうだねっ! じゃあ、また後でね」
 二人と別れて、スマホの電話帳を開き【朝陽】を探した。
『もしもし、朝陽?  今からコンビニ向かうよ』
『了解、待ってる』
 大学近くのコンビニ、いつもの待ち合わせ場所。
「朝陽っ! お待たせ!!」
「……っと……危ないだろ」
 朝陽が見えて周りのことも気にしないで私は、思い切り抱きついた。
「へへっ……ごめんなさい!」
「まったく……早く乗って、着替えに帰るんだよな?」
 彼がそばにいてくれる。隣にいてくれるそんなことが本当に幸せだって思う……。
「うんっ! ねぇ、朝陽……」
 前はちゃんと、好きだって伝えることが出来なかった。自分の傷痕のせいで、朝陽を縛っていたって思ってたから。
 だけど……今、大切な人が目の前にいる。
 朝陽も想いを伝えてくれる……なら、私は、声を大にして言うよ。
「朝陽のこと、大好きだよっ!!」
「ははっ……知ってる。俺の方が好きだけどな」
 朝陽と手を繋ぎ、握っている手を見ると朝陽がプロポーズしてくれた時くれたエンゲージリングがキラキラと光っていて……それは、幸せの象徴みたい。
「幸せだなぁ……」
「もっと幸せにするから、誰よりも……」
 あの日、私は消えない傷を負った。
 そのおかげで朝陽を好きになって、付き合えた。でもその傷痕のせいで、朝陽とすれ違ってたくさん泣いた。
 だけど、幸せな日を迎えるための苦しくて辛かったことがあるんなら、良かったのかなって思う。

 だからね、朝陽。
 これからは、毎日伝えるね……もう、キミのために泣きたくない。キミを想って泣きたい。
 朝陽のことが好きだよ、ずっとずっと……愛してるから。
「愛してるよ、千紘」
 朝陽は私にキスをする。それは今までで1番って言ってもいいほどに甘かった。
「私も朝陽のこと、愛してるよ」





  fin.