「え……どうして?」
「どうしてって、自分がよく分かってるんじゃない?」
 もしかして、あの写真のこと?
「……写真のこと?」
「違うよ、千紘は俺じゃなくて朝陽さんが好きなんじゃない?」
「……えっ」
 その言葉をなぜか否定することが出来ない。
「……火事の時、千紘が取り乱してる時落ち着かせたのは朝陽さんだった。千紘の目も朝陽さんの目もお互いが信頼しきっていて、好きだって言っている様でさ、敵わないって思ったんだ」
「………っ……」
「前々から、俺のこと好きじゃないって感じていた。それは高校生の時から……だけど、千紘のことが好きで渡したくないって思ってた。でも、両想いなのに好き同士がなんで離れているのか俺には理解できないけど」
 好き、同士……? そんなはずは……朝陽は、私のことなんて。
「好きなら、好きだって伝えなきゃだめだよ。自分の気持ち抑えて、伝えられる距離に居るのに伝えず自分の心を殺しちゃだめだ」
「………っ」
「相手がどう思っていたっていいんだよ、ちゃんと伝えたらスッキリするかもしれないし。もし、ダメなら俺が抱き締めてあげるよ……友達として、ね」
 私……伝えても、いいのかな。
「俺は、千紘の笑った顔が見たい。俺に遠慮する必要はない。逆にごめん……俺の“好き”って気持ちに千紘を縛り付けたんだから」
「……亜樹、ごめんね」
 いろんな複雑な気持ちが巡って、それに亜樹の優しさに泣きそうになった。
「行っておいで、ちゃんと本当の気持ち包み隠さず話しておいで」
「うん……ありがと」
 この日いつもは頭を撫でる亜樹は、一度も私には触れることもなかった。そして、私と亜樹は……今日別れることになった。