四階に付きデザイン課へ向かうとそこには、救助者三名のなかの一人。
「理子……っ」
 そこには理子がいた。
「山内、重傷者避難だな……だが、2人は歩けそうだな」
 確かに、後の理子を含めた2人は歩くことが出来そうだったし俺もそれに従った。
 だけど……。
「ごめんなさい、私……歩けません」
 それを言ったのは理子で、先輩は彼女の足を少し触れる。
でもそれだけでとても痛がった。
「……理子先輩っ、一緒に歩きます。だから一緒にいきましょ! ね!」
「私がいたら、梶谷(かじや)さんが避難できないでしょ? だから、私はここで次の救助、待ちます」
「俺が、理子を抱っこして――」
 俺はとっさにその言葉が出た。ただ、理子を救いたい。ただそれだけを思って……。
「ダメだよ、あなたが救わなきゃいけないのは今私じゃないでしょ?」
「……っ」
「あなたは消防士よ、個人的な感情で誰かを死なせてしまったらダメ。そんなのプロじゃない」
「けどっ」
 理子は、俺の夢を応援してくれていたから……そう言ったんだと思う。
「あなたは、これからたくさんの人を救うの。大丈夫よ、頑張れ……必ず、生きて外で会おう」
 そう、言われ……俺は立ち上がった。
「必ず、助けに行くから……だから待ってて」
「うん、待ってる……浩輝(ひろき)!!」
 理子は、歩き出した俺の名前を呼んだ。
 ――『愛してる、ずっと……これからも』
 そんな言葉を言った彼女が俺の見た最後の姿だった。