「そっか……お父さんに言われたら仕方ないね」
 二人は納得してくれて亜樹とは講義の部屋が違うから別れた。
 別れた後、講義室に行くまで今日は無言だった。
「……千紘大丈夫?」
「え? うん、みんな無事だったし、燃えちゃったものもあるけど」
「違うよ、朝陽さんとずっと一緒だったんでしょ? しかも助けたのは朝陽さん」
「大丈夫だよ……」
 ううん、大丈夫じゃない。しまい込んでいた一つの気持ちが叫んでるのがわかるから。
 彼の表情を見て声を聞いて……ああ、私やっぱり朝陽のことを想ってるんだって。
 まだ、忘れられていないんだって。
「嘘でしょ? 本当は、朝陽さんのこと好きなんでしょ? だけど無理やり亜樹くんが好きだって思おうと必死。見てれば分かるよ」
「……そんなこと」
「そんなことないって絶対言い切れる? そんな想いを抱えながら亜樹くんといるのは亜樹くんがかわいそうだよ」
 菜央はそれから言葉を繋いだ。その言葉に私の頭は真っ白になる。
『亜樹くんは気付いてるよ、ずっと千紘の心は俺の場所にないって』