「千紘」
 その時、私を呼ぶ声が聞こえた。それは亜樹でもおばさんでも周りの警察官でもない。私のよく知っている、声……。
「千紘、落ち着け。大丈夫だ。」
 防火服を着ている消防士姿の……朝陽だった。
「でもっ……家にっ! お母さんも中にいるかもしれなくてっ……」
「俺が助けるから、だから落ち着こうか」
 朝陽は、深呼吸を一緒にしてくれた。
「安心してここで待ってて」
 そう、優しく私に言うと私を落ち着かせ頭を撫でた。朝陽は、「いってくる」と言い……他の消防士の人に声をかけあの燃えている場所へと向かっていった。
「千紘ちゃん、大丈夫よ。お母さんは、きっと大丈夫。それに朝陽くんがいるんだから。ね?」
 おばさんは私の腕をさすった。
「……う、ん」
 私……朝陽が来てくれなかったらどうなってたんだろう。
 朝陽、なんか雰囲気が違った……仕事だからかもしれないけどあんなに逞ましいところ見たのは初めてだ。
「……無事で、戻ってきて……っ」
 お母さんも、朝陽も……二人とも無事でいて。