「……ひろ? 千紘?」
「え……?」
 ああ……私大学にいたんだった。
「もー! 彼氏様が来たんだってば〜」
「えっ……あ、亜樹、ごめん」
 昨夜、朝陽と会ってただ挨拶を交わしただけで何もなかった。
それが普通なんだろうけど、でもとても寂しい気持ちになって……それからどう帰ったんだろうか、後の記憶がない。
 一目あっただけでこんなふうになるなんて思わなかった。
「体調悪いの? 大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
「んーん、俺彼氏だし……今日は俺、十八時まで講義あるからさマンション先に行ってて」
「了解ですっ」
 私が講義が終わりだからとマンションの鍵を渡されたので受け取ると、菜央が「良いな〜」と叫んだ。
「何が?」
「だって、いつでも会えるって本当羨ましいよ〜」
 そうなのかな、そうだよね。同じ大学で、ほとんど会えないことはないし、おまけにバイト先も同じ。
 会わない日はないんじゃないかなってくらいだ。菜央の彼、綾くんは遠い大学に進学してしまったから中々会えないらしいし。
 亜樹と別れて、菜央と大学内のレストランでランチをする。
「そういえば……千紘と亜樹くんって今日記念日だよね? お祝いするの?」
「うん……今日はケーキだけ食べてお泊まりで、日曜日デートする予定だよ」
 その後はご飯を食べてからバイトがある菜央を見送り、1人で亜樹のマンションに向かった。部屋に入ると、勝手にお湯を沸かしてパソコンを立ち上げた。
 お湯が沸騰したら紅茶のティーパックをマグに入れてお湯を注ぐ。だけど、何故か集中できなくてパソコンを閉じて床に寝転ぶ。
 スマホを開くとまだ十三時……亜樹くんが帰ってくるまで、まだまだ時間ある。
 あああ……どうしよう暇だ。
 少し、寝ようかな