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「……じゃあ千紘、俺帰るな」
 学校から朝陽の車で送られて家に帰って来た私は、起きているのに狸寝入りしていた。起きて目を見てなんて話せない、もし話したら、心の中に閉じ込めた気持ちが溢れてしまいそうで怖かった。
 人の気配が消えて、部屋のドアが閉まると目を開けた。あぁ、朝陽の匂いがする……久しぶりだ。
「また助けられちゃったなぁ」
 そんなことを思うけど、朝陽が来てくれて本当は嬉しかった。最後、目が閉じるまで朝陽のことを考えてた。朝陽に助けてほしいって思って、そしたら本当に来てくれた。
パラっと、小さなメモ用紙が床に落ちてそれを拾って開く。
【千紘は、千紘のヒーローに守ってもらえよ。幸せになれ。 朝陽】
 そう書かれていて寂しさが襲ってきた。
 朝陽は、小さな頃からずっと私のヒーローだった。この字を見てもう私のヒーローじゃなくなったんだなと実感する。
 うん……朝陽ありがとう。
 これでもう、朝陽の幸せを祈れる……また笑い合える日を想像しながら。