「後、ここだな……」
 二つの倉庫を見て、いなかった。ここにいるんじゃないかなと思うから最後の倉庫を見ることにした。先生に鍵を開けてもらい、スマホのライトをつけた。
「千紘、いるか?」
 倉庫の電気を付け、「やっぱりいない?」と先生が一旦出たが俺は奥に入った。
「千紘? いるか?」
 千紘のことをもう一回呼ぶ。すると、俺の目に写るのは奥に置いてあるマットの上で横たわってる長袖の制服を着た……千紘だった。
「千紘……っ! 大丈夫か」
「あ、さひっ?」
「そうだよ、朝陽だ」
「くる、しっ……」
 そうだ、ここは……暗くて、狭くて、あの時の状況と同じなんだと気づいた。だから彼女を横抱きにする。すると大人しく俺の胸に頭を預けてくれた。最近は避けられていたがそんなことをする余裕もないのだろう。
 俺は倉庫から出ると先生と学校に到着した菜央ちゃんと亜樹くんのふたりがいた。
「水瀬……いたのか!?」
「はい」
 そう言うと「はぁ、良かった」と先生は呟く。
「……朝陽さんっ」
 そう言ったのは菜央ちゃんだ。千紘を心配してくれたのがよくわかる。
「すみませんでしたっ」
「今は謝るとこじゃない、先生保健室貸してほしい……少し横にさせたいんだ」
 亜樹くんは悔しそうに切なそうに言ったから気にしないでと伝えるつもりでそう言い、先生にもお願いする。この時間に保健室を開けてもらうのは気が引けたけど寝させてあげれるところはそこしかないから。
「あぁ……かぎ開けるな」
 彼らと歩いて保健室に入ると、カーテンのあるベッドに向かいすぐにベットに寝かし布団はかけずに俺の着ていたサマージャケットをかけた。
「千紘……少し寝な」
「ん……」
 千紘が目を閉じたところで、近くにあるカーテンを閉じた。
「水瀬、本当に申し訳なかった……」
「いえ……千紘が無事ならいいんです。閉じ込めたやつはちゃんと対処してください。それとなんで、鍵確認する時ちゃんと確認しなかったんですか?」
 もしちゃんと中まで確認していたら、もっと早く気づけたはずだ。
「……俺の監督不行届だ」
「すいません、先生が悪いわけじゃないってわかってるんです……このことは先生に任せます、今後このようなことはないようにしてください」
 でも閉じ込められたのも問題だが、彼女が過呼吸を起こしたかもしれないと俺は感じた。さっき千紘は「苦しい」と言っていたから、あの状況が過呼吸を引き起こしてしまった。
「すみません……俺が一緒に帰っていたら、ごめんなさい。俺の責任です」
 責任、か……同じだな。
「君、亜樹くんだっけ?」
「はい」
「これは君のせいじゃない、大丈夫……君が責任を感じることない」
 千紘は無事だったんだから、本当によかった。
「……ただ、過呼吸を起こしたことで疲れただけだから」
 きっと知らないんだろうなと思いそんなことを言う……大人気ないが、千紘をよく知ってるのは俺だと言いたいくらいだったんだから。
「……過呼吸?」
「ああ……先生には話しましたが、幼い頃のトラウマでねその状況と同じ感じだと度々過呼吸を起こすことがある。だが、今は落ち着いたから大丈夫だよ」
 詳しくは言わない、きっと千紘は俺が話すのを嫌がる。いや知られたくないことだと思う。
 だから「今日は帰りますね、これからも千紘をよろしく頼みます」とそう言って横抱きのまま千紘を連れて家へ帰った。