「千紘と応時くんはさぁ……付き合わないの?」
 弁当を食べていると、急にそんなことを菜央は言ってきた。
「え……? 付き合わないけど」
「千紘は、まぁ……うん分かる」
「おっ、俺は付き合いたいですっ!」
 応時くんはキラキラと笑顔を見せてそう言った。
「千紘ちゃん、好きです!」
「え、えっと……」
 急に言われても、どう答えるべきなんだろうか。
「あ、そうだ! それじゃあさ、お試しで付き合えば?」
「えっ?」
「そうだなぁ……1ヶ月。お試し期間にして、ダメなら終わればいいでしょ? どう?」
 それってなんか違う気がする……けど。
 たった1ヶ月なら。
「まぁ、お試しなら……いいよ」.
「そ、そうですよね……ダメですよね……え? いいって言った!?」
 応時くんは立ち上がり私の手を取った……元気すぎる。圧倒されるくらい、元気だ。
 彼と付き合ったらもしかしたら、本当に朝陽のこと忘れられるかもしれないしいい機会だと思う。
 その後はお弁当を食べて雑談して、放課後に一緒に帰る約束をした。



  ***

 そして放課後。
「千紘、きっと応時くんといれば幸せになれるよ」
「うん……そうだね」
 きっと応時くんと付き合った方が……いい。きっと、お試しのお付き合いを了承してしまったのは運命ってやつなのかな。
「もしかしたら、朝陽さんのことだって忘れられるかもしれないじゃん」
「うん、そうだと思う……」
 応時くんなら、あの明るさで楽しませてくれるだろうなって思えるから。
「まぁ、初めてのデート楽しんで」
「ありがと」
 菜央が部活へ行ってからすぐに応時くんが迎えに来た。
「行こっ! あの、手……」
「て?」
「手、繋いで……いいですか」
 照れながら言う応時くんは顔が真っ赤で……可愛い。
「……うん」
「や、やった!! 千紘ちゃんは、甘いもの好き?」
「うん、好きだよ」
「俺、クレープ食べたいんです!! 駅前の、期間限定で出てるやつ!」
 甘いものっていうのもかわいいと思ったけど、クレープってとこも可愛い。男子はこう言われるのは嫌かもしれないけど……可愛くて守りたくなる感じ。
 彼の言動は、私の母性本能をくすぐらせた。