大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 


 朝食後、みんなで仕事に行く行正を見送りに出たが、行正は今日はすぐには出ていかなかった。

 少し迷うような顔をしたあとで、こちらを見ずに、
「……珈琲」
と呟く。

「はい?」

「……お前の淹れる珈琲、期待している」

 そう言って、行正は出て行った。

 咲子は、ありがとうゴザイマスッ、閣下っという勢いで、
「はいっ」
と返事し、行正を見送る。

 行正が行ってしまったあと、
「おはようございます、奥様」
とにこやかに笑いながら、和風の庭の方を手入れしていたらしい庭師がやってきた。

 行正が頼んだ庭師が腰を悪くしたので、その息子が最近、来てくれている。

 日焼けした肌に白い歯が眩しく、がっしりとした身体つきの、感じのいい庭師だ。

 女中さんたちも彼が来ると、態度が変わる。