大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 


 その夜、咲子が先にベッドに入って婦人雑誌を読んでいると、行正がやってきた。

 なんとなく逃げ腰になりながら、咲子は言う。

「あ、あの、今日は自室でおやすみになられては?」

 行正の部屋にも大きなベッドがあった。

「何故だ」
と行正が見下ろす。

 怖い。
 斬り殺されるっ、と怯えながら、雑誌でちょっと顔を隠しつつ、咲子は言ってみる。

「あの、もう(はら)んだ気がしますので、結構です……」

 阿呆か、と行正の心の声が聞こえてきたとき、行正が口に出して言ってきた。

「阿呆か」

 あ、正解だった、と思った瞬間、手にしていた雑誌を投げ捨てられた。