大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 素敵な洋風建築があったのだが。

 ぱっと見、お店風だったが、凝った造りなだけで、お店ではないようだった。

 そちらを見て、咲子は言った。

「お洒落な家ですね。
 普通の人間の家みたいですけど」

 行正は沈黙した。

 いや、さっきからずっと沈黙しているのだが。

 なにかが違う沈黙だった。

 しばらくして、行正が言う。

「……そうだな。
 店ではなく、普通の民家のようだな」

 いやいや、そう言いたかったんですよ、私もっ。

 っていうか、よく今の私のうっかりな言い方で、真実にたどり着きましたねっ、と思いながら、咲子は訊いた。

「あのー、行正さん、ほんとうに私の心が読めているわけではないのですか?」

 行正は、莫迦(ばか)め、と(さげす)む目をして言う。

「お前の考えなら、誰でも読める」