大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~




 行正と手入れの行き届いた夕暮れの庭園を歩く。

 洋館の部分には西洋式の庭。

 日本家屋の部分には和式の庭があった。

 夫婦二人にはもったいないような大きな屋敷と庭だ。

 まだ入っていない部屋もある。

 こんな素敵なおうちに素敵な旦那さま。

 私はもう少し自分のことを幸せだと思うべきではないだろうか?

 夕日に輝く薔薇のアーチを見ながら、咲子はそう思う。

「少し家の周りを歩くか」

「は?
 え、はい」

 珍しく行正がそんな提案をしてくれるので、門を出て、家の周りを歩いてみた。

「もうこの周囲は探索してみたか」

「いえ。
 まだ少ししか。

 この間まで片付けに忙しくて。
 というか、気分的に落ち着かなくて」

 そうか、と言ったきり行正は黙っている。