大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「まだ欲しくないのなら、少し外でも歩くか」
と言われ、ええっ? と咲子は驚く。

「行正さん、私の心が読めるのですかっ?」
と言って、

「いや、今、明らかに食欲なさそうな顔してたろ」
と言われてしまう。

 そ、そうですよね。
 ビックリしました。

 もし、私の仲間なら、ちょっと嬉しいなと思ったのですが、と思ったあとで、咲子はハッとする。

 いやいやいやっ。
 もし、行正さんに私の心が読めたら。

 私が行正さんに対して抱いている不満もすべて伝わってしまいますよね。

 やはり、夫婦というものは、ちょっぴり秘密があってこそ、上手くいくもの。

 ――と、婦人雑誌に書いてありました、と咲子は思う。

 暇なので、主婦向けの雑誌をいろいろと読んでいたのだ。