その日、帰ってきた行正に、咲子はつい言っていた。
「あまり思いつきませんでした」
「なんの話だ」
と行正に言われる。
いや、あなたのいいところをあまり思いつかなかったんですよ。
何故でしょうね?
客観的に見たら、こんな素敵な旦那さま、なかなかいないと思うのに。
やはり、蝋人形だからでしょうか、と思いながら、咲子は行正をじっと見つめた。
あ、しまった。
心の声を読んでしまうっ、と思ったとき、行正が言った。
「そろそろ夕食にするか?」
「え、はい」
と言いはしたが、行正は今日はいつもより早く帰ってきていたし。
昼間のお茶会で、みんなが手土産に持ってきてくれたお菓子をいっぱい食べていたので、まだお腹は空いていなかった。



