いやいや、コロッケさまに対して、ごときはなかったですね、と思いながら、咲子は黙々とコロッケを食べる。

 すると、
「機嫌が悪いのか?」
と行正が訊いてきた。

 ゆ、行正さんが私の機嫌を気にするなんてっ、と咲子は驚く。

 いや、行正の顔は、相変わらずの無表情ではあったのだが。

「悪いです」

 素直にそう認めると、
「何故だ」
と行正は訊いてくる。

「行正さんがまさかあのようなことをなさるとは思っていなかったので」

「……俺がするとは思わなかったって。
 じゃあ、お前は夫以外の誰とするつもりだったんだ」

 いや、誰ともしませんよ、そんなこと、と思う咲子に行正が言う。