大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 だが、目を開けたそこには、カーテン越しに月明かりを透かすにアーチ型の窓。

 ああ、私、結婚して家を出たんだなあ、と思ったそのとき、誰かが寝室に入ってきた。

 そのままベッドに入ってくる。

 誰ですかっ?

 そして、なにしに来ましたっ?
と咲子は思ってしまった。

 横を振り向くと、行正が半身起こして座っていた。

 思わず、思ったままを口にしてしまう。

「なにしに来ましたっ?」

「……なにしにって。
 結婚したんだ。

 (とこ)を共にするのは当然だろう」

「でっ、でも、行正さんはっ。
 家にはあまり帰って来ずにっ」

 いや、今日、一日いたな。

「たくさんお(めかけ)さんを作ってっ」

 今日結婚して、すぐにたくさんお妾さん無理か。

「私のところには来ないものだと思っていましたっ」

「……なにを言ってるんだ。
 そして、何処からお妾さんが湧いてきた」

 いや、そうなんですけどね、と思いながら、咲子は緊張して後退する。