大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 やれやれ。
 無事、お試し婚の一日目が終わったぞ。

「では、おやすみなさいませ」
と咲子は行正に頭を下げる。

 うん、と行正は頷いた。

 湯上がりには、弥生子に、
「今夜はこれを」
と渡された新品の寝巻きを羽織っていた。

 可愛らしい柄の浴衣だ。

 そのまま部屋着にできそうな感じの浴衣なので、行正の前で着ていても、別に恥ずかしくはない。

 咲子は寝室に行き、

 今日は大変だったけど。
 明日からは、ゆっくりできそう。

 そうだ。
 近いうちにお友だちを招いて……

 などと算段しながら、天蓋付きの大きな舶来物のダブルベッドを眺める。

 素敵。
 行正さんと暮らすのは緊張するけど。

 ここでの暮らしは悪くないな。

 西洋のお姫様みたい、と思いながら、ベッドに入った。

 おやすみなさい、と電気を消し、目を閉じると、なんだか実家にいる気がして、ちょっと家が恋しくなる。