「お帰りなさいませ」
屋敷に入ると、中はすでに美しく整えられていた。
伊藤家が用意した家具も、お披露目ののち、収められている。
仕事をてきぱきとこなす女中さんや下男の人たち。
若い二人だけの住まいということで、三条の屋敷ほど人はいない。
洋服や着物などは、すでに運んであったが、後から持ち込んだ荷物もあったので、それを片付けたり。
料理人が作ってくれた美味しい食事を三食いただいたり。
若い女中さんたちと楽しくこの辺りの美味しいお店の話などしているうちに夜になった。
女中さんも料理人の人もほとんど通いなので、みんな帰ってしまい。
一番年配の女中さんだけが、家の一角に寝泊まりするようで、
「では、なにかあったらお呼びください」
と言って去っていった。



