大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 


 仲良く、ふふふふ、か。

 ほんとにそんな感じならいいんだけど、と思いながら、咲子は授業を受けていた。

 だが、そういえば、家まで送ってもらったとき、ばあやも出てきて、行正と少し話していた。

 子どもの頃から可愛がってくれていたばあやだ。

「こういうおうちに生まれたからには、嫁ぎ先は選べませんが。
 おかしな男に咲子さまを嫁がせるとか、絶対嫌ですからね、ばあやは」
といつも言っていたはずのばあやは、何故か行正とニコニコ話していて。

 あの愛想のない行正も、ばあやに対してだけは、少し口調がやさしかった。

 使用人の話になったとき、行正の顔を見ながら、ばあやは笑い出した。

「あらあら、まあ、そうですね。
 三条様がご用意してくださったほどのお屋敷。

 若い人たちだけの住まいと言っても、住み込みの使用人は必要ですよ」

 ばあやと行正の間には、ちょっとほのぼのした空気が流れていた。

 私とだと、なにもほのぼのしないのだが……。