大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「私、こう見えて、人の感情には敏感なのっ。
 あんたみたいな鈍い人とは違うのよっ」

 おおっと、美世子さん。
 人の心が読める私に喧嘩を売りましたねっ。

 咲子は、内心、ふふふと笑っていた。

「私も人の感情に敏感ですよ」

「そうかしらっ?
 あなたのような人が?

 じゃあ、今、私がなにを思ってるか、当ててごらんなさいよっ」

「じゃあ、もし、当たったら、この間、祠見に行った帰りに寄った甘味処で、あんみつおごってください」

「い、いいわよっ。
 勝負よっ」

 えっと……と咲子は美世子を見つめて言った。

「『やだ。
 なんか面倒臭いこと言い出した、この子。

 ちょっと喧嘩吹っかけただけなのに。

 あんみつ?
 あんみつがいいの?

 私はこの間食べそびれた、しるこセーキがいいわっ』」

「あ……当たってるわっ」
と青ざめる美世子の横で、文子が冷静に呟いていた。

「いや、それ、私にもわかりますけど」