大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「サトリだったり、忍者だったり忙しい奴だな」
とその雑誌を手に呟く行正に咲子はちょっと赤くなって言う。

「どっちでもないですよ」

「そうだな。
 どっちでもないな。

 サトリでもない。

 あのとき――
 俺が思ってたこともわかってなかったろ」

 そう言いながら、行正は雑誌をサイドテーブルに置いた。

「お前が初めてこの家に来るとき、俺が迎えに行ったら、ばあやがお前の手を握り言っていた」

『いつでも、ばあやを呼んでくださいよ。
 ばあやは何処からでも咲子さまのところに駆けつけますからね――』

「……俺も言いたいと思って聞いてたんだ。

 俺も、いつかお前にそう言いたいと。

 ――咲子。

 いつでも、何処でも、俺を呼べ。
 俺はお前のためなら、何処からでも駆けつける」

 行正さん……と見上げると、行正は咲子の両の肩に手を置き、口づけてきた。

 照れて離れた咲子はふたたび、外を見た。

 もうかなり日は落ちていて、清六たちがよく手入れをしている庭に灯りが灯り、美しい。