それからしばらくして、文子が帰ってきた。
「なによ、文子さん。
あなた、全然変わってないじゃないのよ」
咲子の家にみんなで集まったのだが、美世子が早速、ケチをつけはじめる。
「英吉利に行ってきたんでしょ?
見るからに貴婦人! みたいな感じになって帰ってくるのかと思ってたのに。
すごいドレス着て、宝石とかジャラジャラつけて」
「宝石ジャラジャラな貴婦人って、いますかね?」
と咲子は苦笑いし、文子は、
「船での往復に時間がかかっただけで、向こうには数日しか滞在してないのに、変わるわけないじゃないですか」
と相変わらず冷静なことを言う。



