大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「あー、暇になっちゃったわ。
 咲子、あんたもやることなくて暇でしょう?

 なにかおいしいものでも食べに行きましょうよ」
と弥生子に言われ。

 婚礼支度を整えに行くはずだった百貨店や、レストランを連れ回され、日々、おいしいものを食べさせられた。

 ――真衣子は遊び歩いて言うこと聞かないし。
 ちょうどよく連れ回せるこの子がいなくなると寂しいわ。
と嬉しいんだか、嬉しくないんだかわからない弥生子の心の声が流れ込んでくる。

 レストランで咲子が微笑み、
「お義母さま。
 結婚してからの方が自由な時間があると聞きますし。

 またいつでも誘ってくださいね」
と言うと、弥生子は、

「嫌よ。
 あなたを連れて歩くと、目が肥えてて、いい物ばかり欲しがるからお金がかかるのよっ」
と言い返してきた。

 いや、だからですね、お義母さま。

 私が、あ、これ、いいな、と思って、じっと眺めていても。
 別にその度に、買ってくださらなくてもいいのですよ……?

 そう思いながらも、笑ってしまう。

「さ、じゃ、次行くわよ」
と弥生子は立ち上がる。

「あのっ、まだデザート食べ終わってませんけどっ」
と慌てながらも、咲子はついて行った。