その後、三条行正とは会うこともなく、結婚の準備は進んでいった。
屋敷はもう整っているし、嫁入り箪笥なども職人に頼んだ。
祝言の準備もはじまっていたのだが。
突然、行正が祝言を挙げることを拒み、中止になった。
「なに言ってるの、籍は入れないんだから、祝言くらい挙げなさいよ」
と静女は言ったらしいのだが、行正は、
「結婚生活を続けていけると覚悟ができたら」
と言って強硬に断ったらしい。
張り切って婚礼衣装の準備をしようとしていた弥生子は肩透かしを食らい、
「もうやめなさいよ、こんな結婚」
と言い出したが、父は、
「いやいや、行正くんは立派な男だ。
ちゃんと咲子との結婚生活を続けていけるかどうか、真剣に考えてくれている」
と感心していた。
いやいや、どうなんですかね~?
簡単に私を放り出すためじゃないですかね~?
と咲子自身は危ぶんでいたのだが。



