大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 


 行正と咲子はそのまま祠の方に向かい、歩いていった。

 ついでに拝んで帰ろうという話になったのだ。

「……お前のサトリ話は、お前の心根がやさしいから。
 みんなに気を使い、人の顔色を窺いながら生きてきたっていう話かと思ってたんだが。

 違ったな」

「やさしかったのは、みなさんの方でしたね……」

 お母さまは違うけど。

 でも、知らないところで、お義母さまたちみたいに、自分に合わせてくれていたのかもしれないな、と咲子は思う。

 ……一生、そんなこと口に出して言いそうにない人だけど。

「お前は愛されて生きてきたんだな」

 改めてそう言われ、はい、と咲子は涙ぐむ。

 行正と二人、目を閉じ、祠に手を合わせた。