そのまま咲子たちは伊藤家に向かった。
「そういえば、この間もそんな感じの妙なことを言ってたわね」
自分に心が読める気がする、と言った咲子に向かい、弥生子はそう言った。
「あのときも言ったけど、あなたは全然人の気持ちに敏感じゃないわよ。
まあ、そのぬる~い感じが付き合いやすいとこではあるんだけど」
「でも、奥さま」
と横から、ばあやが口を挟んでくる。
「咲子さまはよく、奥さまがお茶を飲みたがっているときに、飲みたいお茶を女中たちに淹れさせて運んでらっしゃいましたよ」
「……自分では淹れないんだな」
と横で行正が呟く。
いやいや、私が淹れても美味しくないですからね、と思う咲子の前で、弥生子が、ああ、あれね、とちょっと上を見る。



