大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「お母様は内心、これ、と心に決めている方を右手で持ち。
 少し上にかかげて、長くご覧になります」

「じゃあ、それででしょうよ」
と言った美佳子は、

「自分でわかってるんじゃない。
 心を読んでるんじゃなくて、母親の顔色を窺うのが上手いだけだって」
と言う。

 ……いや、その件に関してはそうなんですけどね。

 でも、考えてみれば、他もそんなものなのかも、と咲子は思いはじめていた。

「あんたが意外に世渡り上手だったってだけよね。
 でも、大事よ、そういうの」

 自身の言動に幼い娘がビクビクして常に身構えていた、という事実に気づきながらも、あっけらかんと母は言う。