行正が休みの日、ふたりは馬車で咲子の実母、美佳子の家に向かっていた。
馬車の中で咲子は語る。
「子供のころから、人の顔を見ていると、その人の心が読める気がしてたんです。
幼い頃に母が出て行ったりとか、いろいろあったからですかね?」
「そうか。
まあ、お前も色々と家庭環境が複雑だったようだからな。
弥生子さんとは気が合うようだが。
継母ではあるから、気を使っているところもあって。
人の顔色を窺うようになり。
そんな風に思うようになったのかもしれないな」
「……どうなんでしょうね?
でも、母といるときから、読めていたような気もします。
まあ、私はずっと気まぐれな母の顔色を窺って過ごしていた気がするので。
それでなのかもしれないですね」
今もそうだ。
車でなくて、馬車なのも。
美佳子は車より、馬車の方が優雅な感じがして好きだと言っていたからだ。



