仕事に行く前、玄関先で見送る咲子に行正は言った。
「お前がどうして、そんなことを考えるようになったのか、検証してみよう」
女中たちがいるので、はっきり口に出しては言わなかったが。
咲子には、何故、咲子が人の心が読めると思い込んだのか、調べてみよう、という意味だとちゃんと伝わったようだった。
咲子は、
「あ、ありがとうございますっ」
と感激したように言い、頬を赤らめる。
……ああ、可愛い。
このままお前を眺めていたい。
仕事に行きたくないが。
お前のためにも働かねばな。
そんなことを思いながら、行正は、なにひとつ表情には出さずに、
「行ってくる」
と言って出ていった。
まだ見送っている咲子や女中たちを振り返る。



