大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 ……は? と行正は、らしくもなく間抜けな声を出しそうになる。

「いや、豆腐屋さんのラッパの音ですよ」
と咲子は言った。

「あのパーフーって音、とうふーって聞こえるから鳴らしてるんですかね?」

 俯いていた咲子は、目の前の冷奴(ひややっこ)を見つめながら、そんなことを考えていたようだ。

「……豆腐屋に訊いてみろ」
と言ったあとで、行正は付け加える。

「十丁は買うなよ」

「五丁にしときます」

 咲子はそう頷いた。