大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 一晩吊るされた、ぬるくてまずい。

 妻以外の人間が淹れたんだったら、飲めたもんじゃない珈琲をまずくないと感じたのも。

 笑顔を浮かべて話せなかったのも。

 今、会話の途中で限界を迎えて抱き締めてしまったのも。

 すべて、この妻が可愛すぎるからだ――。

 だが、咲子は行動より、言葉を欲しがっている気がする。

 咲子は話の続きが気になっているようだったが。

 もう手を出さずにいるのは無理なうえに。

 本心を口に出すことは恥ずかしい。

 そもそも、日本男児たるもの、妻を褒めちぎるような言葉をそうポンポン出していいものなのか。

 そう思ったとき、警戒心の強そうな文子とあっという間に恋に落ち。

 あっという間に彼女を連れ去ってしまったルイスの人の良さそうな笑顔が頭に浮かんだ。