大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「お前の淹れてくれた珈琲を飲みながら、笑ってお前と話したい思っていたんだが……。

 結局、うまくいかなかったのは、あの珈琲のせいなのか。

 それとも――」

 それとも? と咲子が自分をじっと見つめてくる。

「それとも……」

 咲子が先を聞こうと身を乗り出しすぎる。

 そんな愛らしい目で見つめられたら、もう駄目だろう。

 こんな場所で、二人きりで、そんな風に無防備に近づいてこられたら――。

 行正は結局、続きの言葉は口に出さずに、咲子を抱き締め、口づけた。

 あのとき、上手く咲子と会話できなかったのも。

 今、話の途中で咲子を襲ってしまったのも同じ理由だ。