大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「……やはり、お前には俺の心の声が聞こえるのだろうかと思うくらい正確だな。

 だがまあ、あの珈琲を飲んで、その台詞を吐かない人間はいないと思うから、お前がサトリでなくとも、正解するだろうな」
と言ったあとで、行正は付け足す。

「だが、人の心は複雑なので、それだけを思っていたわけではない」

 そう言いかけ、改めて口に出すのは恥ずかしいな、と思っていた。

 勇気がいる。

 今は、こいつに、ほんとうに心が読めて欲しいと思う。

 だが、勇気を出して口から出してこそ、意味があるのだろうとも思っていた。