大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 


「じゃあ、ほんとうはなに考えてたんですか、行正さん」

 咲子にそう問われた行正は、

 訊くのか、そこで。

 ほんとうはなに考えてたのかとか、と身構える。

 ……しかし、なにを考えていたとか細かいことを訊かれても。

 お前にそんな風に見つめられると、俺はいまいち冷静でないからな。

 すぐには思い出せないな、と思いながら、行正は呟いた。

「俺の考えていたこと、か」

 ちょうどベッドの上だったので、初夜に考えていたことを思い出してみる。

「怯えるな。
 悪いようにはしない」

「……それは口に出しておっしゃいましたけど」

「今、冷静に考えると、活動写真で、よく悪党が吐いている台詞のようだな」

 そう呟くと、咲子は花のように笑った。

 愛らしい!

 夫婦ふたりきりの寝室で、こんな話ばかりしているのもどうだろうっ?

 もっと違うことをした方がっ。

 いやいや、咲子の気持ちの方が大事だ、と行正は抱きしめたい気持ちを抑え、咲子のために思い出そうとする。