大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 庶民が結婚するのとは訳が違う。

 家と家との大問題になってしまうので、そうそう別れはしないだろうという考えからか。

 行正の父も、咲子の両親も、あっさりその提案を受け入れた。

 ほんとうに、しないですかね? 離婚。

 行正さん、容赦無くしそうですよ。

 なんか跡継ぎさえ手に入れば、嫁はどうでもいいって顔してますよ、と咲子は怯える。

 まんまと跡継ぎ候補の子どもたちを二、三人手に入れたあと、さっさと咲子を離縁する鬼のような……

 いや、この人、ずっと無表情なだけなんだが。

 顔が端正なだけに無表情になられると怖い。

 まあ、ともかく、そんな顔で自分を見下すように見る行正の姿が浮かんだ。

 私……人の心が読めるだけじゃなくて、未来まで見えたのでしょうか、と咲子は不安になる。

 自分が叩き出されるその光景が、死ぬほどリアルに思い浮かんだからだ。

 もはや、それが確定している自分の未来のように感じてしまう。