咲子は、夜、寝室のベッドの上で行正に言われた。 「人の心が読めると言い張るのなら。 今からお前に心の中で伝言を送るから読んでみろ」 はいっ、と咲子は気合を入れる。 心の中をしっかり読み取ろうと、行正の目を見つめてみたが、行正は目を閉じてしまった。 はっ、私に心を読まれまいとしていますねっ、と咲子は思ったが。 単に行正は見つめられて照れたので閉じてしまっただけだったし。 表情を窺わないと、その考えがわからないことから言っても、心が読めているはずもなかった。