大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「それに、よい縁談を求めて積極的に動かれるのはよいのですが。

 あちこち、いろんなところをいろんな男性と出歩いてらっしゃるのはいかがなものかと。

 それから――」

「うるさいわねっ。
 もういいわよっ」

 感情的になるでもなく、見たまま思ったままを淡々と伝えてくる文子が美世子は苦手なようだった。

 強引に話を終わらせようとした美世子だったが、ふと不安になったように訊く。

「それにしても、なんであんた、そんなに知ってるのよ。
 人目につく場所には行ってなかったはずなのに」

「たまたま見てしまうんです。
 私は目立たないので、美世子さんは私に、いつも気づかれてはいないのですが」

「あんた、怖いわ……。
 得体の知れない咲子より、なんか怖いわ」

 いや、私の何処が得体が知れないのですか。

 人の心がちょっと読めるところですか。

 でも、あなたに関しては、別に読まなくても、全部口から出て丸わかりなのですが。

 いつも嫌味を言ってはくるが、裏表のない美世子のことを咲子はそう嫌いではなかった。

 ふん、と鼻を鳴らして、美世子は咲子に言う。