大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

 

「あーあ、文子さんがいないと、ちょっと寂しいわね」

 翌日、お料理教室で帰り支度をしているときに、美世子がそんなことを言ってきた。

 まだ昨夜の悪夢が頭にこびりついている咲子は、ぼんやり、

「……そうですね」
と言う。

「よし、英吉利(イギリス)に行くわ、私」

 そんな美世子の言葉に、ようやく咲子は笑い、
「でも、文子さんと入れ違いになってしまうかもしれませんよ。
 日数かかるから」
と言ったが、

「でも、行くわ、英吉利」
と美世子は宣言する。

 ……それ、おそらく、英吉利に行く目的、文子さんじゃありませんよね、と思いながら、咲子は言った。

「飛行機で行けたら速いでしょうにね」

 まだまだ長距離飛行は難しい時代だった。

「飛行船ならそのうち行けるかもよ」

 そんな話をしながら、別れて帰り、咲子は台所に立った。