大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「そうよっ。
 もう決まってるわよっ。

 我が家にふさわしい資産家の三男とっ。

 三男でも充分資産を持っていて、長男ほどお姑さんがうるさくなさそうで、身長も顔もまあまあ。

 これでいいと思っていたのにっ。

 なんで、嫁入り先を探すのにそう熱心でもなさそうだったあんたがいきなり、行正さまなのっ?

 行正さまなんて、雲の上のかただと思ってたのにっ」

 あなたより、私の方が行正様にふさわしいわっ、と叫び出す美世子に文子が言う。

「えっ? そうですか?
 咲子さんも美世子さんも、おうちもいいし、お美しいですが。

 三条家に嫁がれるには、美世子さんは少々派手すぎなように感じます」

 うっ、と美世子がつまる。

「あと、美世子さんは少々、落ち着きがないような気がします」

 ぐっ、と反論しかけた美世子が黙った。