大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

「はあ、でもまあ、行正さんのお母様が今風な方なので。

 うちに嫁入りしたからには、嫁としてバリバリ鍛えますっ、て感じでもないんですよね。

 そもそも、お義母さま自体が、お姑さんから逃げ回ってたらしくて」

 そんな静女の様子が想像できて笑ってしまう。

「最初は夫婦二人だけで、ゆっくり暮らしなさいって言われました」

 でも、私は、あの蝋人形な行正さんと二人で暮らすくらいなら、お義母さまたちと暮らしたいんですけどね、と咲子は思っていた。

「静女サン、そんな感じね。
 奥様方のサロンに招かれたとき、何度かお話ししましたよ。

 静女さんは、子どもの頃から、西洋的なモノに囲まれて育ったらしくて。
 私には、すごく話しやすい人です」

 ルイスは美しい静女の顔を思い出しているかのような表情で、頷いて言う。

「なにそれ」
とさっきから微妙に嫌味を言ってくるクラスメイト、荻原美世子(おぎわら みよこ)が仁王立ちになって言う。