今、見送りに出てきてくれている咲子を見ながら行正は思う。

 俺の妻となってから、咲子はさらに輝くばかりに美しい。

 清六以上の色男を側に置くとかとんでもない。

 咲子を見れば、男はみんな咲子を好きになってしまうだろうから。

 そんな、美世子や文子や弥生子や美佳子に、いやいやいや、と手を振られそうなことを行正は真剣に考えていた。

「行ってらっしゃいませ」

 振り返った自分に咲子が言う。

 口を開けば、らしくもなく愛をささやいてしまいそうになるので、行正は無表情に、こくりと頷いた。