四月に入り、高校二年生へとコマを進めたわたし。
 原田くんの人生を足止めしておいて、自分だけが着々と歩む未来。残酷すぎて、気持ちが悪い。

「こら瑠美っ。いい加減、元気出してよおっ」

 気鬱な日々を過ごすわたしの側で、美希ちゃんはいつも明るくいてくれた。

「なにか美味しいもの食べに行かない?近所に新しくオープンした、カフェあるんだよ。気になってるんだから、瑠美付き合ってよっ」

 それはすごくありがたいことで、わたしの顔にもほろりと少し、笑みが浮かぶのだけれど。

「ごめん、美希ちゃん……カフェは他の子と行って?」

 今は人生を楽しむ気には、到底なれない。

「瑠美……」
「原田くんが目を覚まさないのに、わたしだけが楽しいこと、できないよ」

 原田くんの病室はあの日あの時のまま、ずっと変わらない。
 個室で、管が多くて、物静かな部屋。
 ピッピと小さな電子音だけが聞こえていて、「原田くん」と呼びかけても、彼からの返事はない。

 瑠美、瑠美、瑠美、瑠美。

 あれだけわたしの名を呼んでくれていた原田くんは、もうどこにもいないんだ。