ナマステ。私はソナム・チョープラー。今日、私は結婚します。……一度しか会ったことのない男性と。

お相手の男性の名前は、ランヴィール・シュロフさん。彼の家はインド国内でも有名な会社を経営していて、私の父が経営する会社の取引先の一つです。会社同士の結び付きを強めるため、私はランヴィールさんの家に嫁ぐことが決まりました。

政略結婚と呼ばれるものですが、悲しいとはあまり思いません。私の友達もみんな親に結婚相手を連れて来られ、結婚していきました。この国では珍しいことではありません。

赤いサリーを着せられ、細かなゴールドのアクセサリーをいくつもつけられました。そして、母が手に塗料を持ってやって来ます。

「ソナム、今からヘナタトゥーを入れますね。手を出しなさい」

母に言われ、私は大人しく両手を差し出しました。ヘナタトゥーとは、ヘナと言う植物の葉のペーストを使って腕や足に施すタトゥーのことです。古くは魔除けや健康祈願の装飾として使われていました。通常のタトゥーとは違い、時間が経つと消えてしまうのが特徴です。