居酒屋のカラオケの機械が、最後に選曲された曲のイントロを流し始めた。
僕がミスチルやKinKi Kidsを歌い、会場が熱気に包まれる中で、あかりとみんなが選んだのは、手嶌葵の『明日への手紙』だった。いつしか僕たちは、その歌詞の切実さと、歌う僕たちの必死さが混ざり合ったこの曲を、親しみを込めて『汗の手紙』と呼ぶようになっていた。
「明日への手紙」――。
あかりの声が重なり、遥や安奈、そして正男や上松の声が続く。歌い出しから、まるで胸の奥に刺さっていた棘が抜けていくようだった。まだ何者でもない僕たちが、未来の自分に宛てたメッセージ。それは、おばあちゃんとの別れや、庭で交わしたあの不器用な誓い、その全てを抱えて前へ進むための、僕たちだけの決意表明だった。
歌い進めるうちに、僕たちの手は熱く汗ばみ、互いの体温が重なる。あの庭での結婚式ごっこ、僕たちが歩んできた歪で、それでも愛おしい日々のすべてが、その「汗」となって滲み出ていた。大人になった自分たちへ向けた、今しか歌えない必死の『汗の手紙』。
その光景を見ていた常連のおじさんも、忙しく立ち回っていた店員の子も、いつの間にかマイクを置いて、じっとその合唱に聞き入っていた。
歌い終えたとき、僕たちの目には、理由なんて分からないけれど、涙が溢れていた。
「いい曲だね、本当に」
あかりが僕の手を握りしめる。その手は少し湿っていて、とても温かかった。その温もりが、僕が今、確実に「生きている」ことを教えてくれる。
そして、その感動の余韻をかき消すように、いつもの常連のおじさんが長渕剛の『乾杯』をがなり立てた。僕たちは笑いながらコップをぶつけ合い、その拍子にグラスが割れても、今日は誰も気にしなかった。
店員も「もう、しょうがないなぁ」と笑って許してくれた。泣いて、笑って、歌って、壊した。それは、ただお金をかけた儀式では決して届かない、僕たちだけの、魂の門出だった。
窓の外では、空が晴れ渡り、星が僕たちの誓いを見下ろしていた。僕はあかりの隣で、この瞬間のすべてを心に焼き付けた。僕たちの『汗の手紙』は、今、確実に未来へと投函されたのだ。
僕がミスチルやKinKi Kidsを歌い、会場が熱気に包まれる中で、あかりとみんなが選んだのは、手嶌葵の『明日への手紙』だった。いつしか僕たちは、その歌詞の切実さと、歌う僕たちの必死さが混ざり合ったこの曲を、親しみを込めて『汗の手紙』と呼ぶようになっていた。
「明日への手紙」――。
あかりの声が重なり、遥や安奈、そして正男や上松の声が続く。歌い出しから、まるで胸の奥に刺さっていた棘が抜けていくようだった。まだ何者でもない僕たちが、未来の自分に宛てたメッセージ。それは、おばあちゃんとの別れや、庭で交わしたあの不器用な誓い、その全てを抱えて前へ進むための、僕たちだけの決意表明だった。
歌い進めるうちに、僕たちの手は熱く汗ばみ、互いの体温が重なる。あの庭での結婚式ごっこ、僕たちが歩んできた歪で、それでも愛おしい日々のすべてが、その「汗」となって滲み出ていた。大人になった自分たちへ向けた、今しか歌えない必死の『汗の手紙』。
その光景を見ていた常連のおじさんも、忙しく立ち回っていた店員の子も、いつの間にかマイクを置いて、じっとその合唱に聞き入っていた。
歌い終えたとき、僕たちの目には、理由なんて分からないけれど、涙が溢れていた。
「いい曲だね、本当に」
あかりが僕の手を握りしめる。その手は少し湿っていて、とても温かかった。その温もりが、僕が今、確実に「生きている」ことを教えてくれる。
そして、その感動の余韻をかき消すように、いつもの常連のおじさんが長渕剛の『乾杯』をがなり立てた。僕たちは笑いながらコップをぶつけ合い、その拍子にグラスが割れても、今日は誰も気にしなかった。
店員も「もう、しょうがないなぁ」と笑って許してくれた。泣いて、笑って、歌って、壊した。それは、ただお金をかけた儀式では決して届かない、僕たちだけの、魂の門出だった。
窓の外では、空が晴れ渡り、星が僕たちの誓いを見下ろしていた。僕はあかりの隣で、この瞬間のすべてを心に焼き付けた。僕たちの『汗の手紙』は、今、確実に未来へと投函されたのだ。

