しゃべる人形

火葬場の扉が閉まり、最期の別れの時間が訪れた。
その時、僕の視界の端で、吉野家のニコルに似たあの看護師さんと、『小さなお葬式』の女の子が、まるで自分の親族を失ったかのように激しく涙を流しているのが見えた。彼女たちの頬を伝う涙はあまりにも純粋で、僕たちの心に直接突き刺さった。
「世の中は冷たいって、ずっと思ってたけど……」
僕がそう呟くと、みんなも小さく頷いた。僕たちが今まで「大人」というものに対して抱いていた冷酷なイメージが、彼女たちの涙によって音を立てて崩れていくようだった。
その空気に引き寄せられるように、正志がゆっくりと口を開いた。
「なあ……俺、柔道はこれからも続けるよ。でも、今までみたいに周りの奴らを威圧したり、近所のおばさんをすっ飛ばしたり、そういう非常識なことはもうやめるわ」
正志の言葉に続いて、上松も決意したように言った。
「俺もだよ。あかりのお母さん以外……いや、もうあかり以外とあんな変な関係になるのはやめる。もっと、ちゃんと生きるよ」
亡きおばあちゃんの棺の前で、二人がそれぞれに誓った、あまりにも不器用で、しかし切実な宣言。それは、おばあちゃんという死をきっかけに、僕たちの中に芽生えた「何か」が、言葉となって形になった瞬間だった。
僕たちはその不器用な宣言を聞きながら、複雑な気持ちで空を仰いだ。おばあちゃんが見守る中で交わされた、あんな誓い。それが果たしていつまで続くのかは誰にも分からない。それでも、あの瞬間、僕たちは確かに「変わりたい」と願い、互いにそれを誓い合っていた。
おばあちゃんの人生の終着点は、僕たちにとっての「新しい始まり」の場所になったのかもしれない。雨上がりの空から、柔らかな光が差し込んできたような気がした。