しゃべる人形

葬儀場の重い扉を開けると、そこには予想外の光景が待っていた。
なんと、部長の佐藤先生の姿がある。そしてその傍らには、『小さなお葬式』のCMに出演しているあの女の子までが立っていた。テレビの中でしか見たことのない、あの独特の空気を纏った少女を前に、僕は一瞬だけおばあちゃんの死という現実を忘れ、高揚してしまった。
あかりの隣に並びながら、僕は抑えきれない好奇心でその子に声をかけた。
「俺、この子のファンだったんだ。いつもテレビで見ててさ」
僕が悪気なくそう言うと、少女はふわりと微笑んだ。だが、次の瞬間、横からあかりの鋭い声が飛んできた。
「秋夫さん、今はそういう話をする場じゃないでしょう」
僕はその言葉に、胸を打たれた。かつてのあかりなら、ただ状況に飲み込まれ、僕の言動をただ受け入れていただけだったかもしれない。けれど、今のあかりは、場の重みと、今ここでなすべきことを理解し、僕を窘(たしな)めるだけの判断力を持っていたのだ。
「……あかり、成長したな」
僕が思わず独りごちると、それを聞いていた正男がニヤリと笑った。
「おいおい秋夫、今日のお前はダメだな。あかりに完全に負けてるぞ。あかりの方がよっぽど大人になってるじゃないか」
その言葉に、周りにいた皆もつられて笑った。葬儀という厳粛な場所で、不謹慎で場違いな僕のミスが、かえってみんなの緊張を解き、あかりの成長を祝うような温かい空気を運んできた。
僕たちが笑い合っているのを見て、亡くなったおばあちゃんもきっと、「この子たちは大丈夫だ」と安心しているような気がした。悲しみと、成長への喜びが混ざり合う、不思議な葬儀の始まりだった。