しゃべる人形

連絡はすぐに繋がり、上松、長尾、正志たちが駆けつけてくれた。彼らは開口一番、「もしもの時はいつでも駆けつけるから」と言って、僕の家に安置されたおばあちゃんの元へ集まった。
夜は長かった。僕らは交代で、眠るおばあちゃんのそばに座り、まるでまだそこにいるかのように、ぽつりぽつりと話しかけ続けた。
そんな時だった。深夜の静寂を破るように、玄関のベルが鳴った。
誰だろうか。こんな時間に。警戒しながらドアを開けると、そこには驚くべき人物が立っていた。病院で僕たちの手続きを手伝ってくれた、あの「吉野家の藤田ニコル」に似た看護師さんだった。
「お疲れ様。あかりちゃんがお世話になっている病院の者です。おばあちゃんの最後のお別れを、どうしても見届けたくて……通夜と葬式に参列させていただけないでしょうか」
彼女はそう言って、深く頭を下げた。僕らは言葉を失った。病院という職場で、ただ事務的に対応するだけで十分だったはずの彼女が、わざわざ個人の家にまで足を運んでくれた。その事実に、僕たちの心は揺さぶられた。
僕たちは、この社会の隅っこで生きてきた。
いじめられ、見下され、「頭が悪い」とラベルを貼られ、大人の世界からはいつも切り離されてきた。そんな僕らにとって、大人とは「理解してくれない存在」であり、あるいは「差別や区別をしてくる壁」だった。
それなのに。
こんなにも優しく、心から僕らに寄り添ってくれる大人が、この世にいるなんて。
彼女の純粋な善意に触れた瞬間、張り詰めていた糸が完全に切れた。僕らは、おばあちゃんのためというよりも、自分たちが今まで受けてきた孤独と、それを見つけてくれた彼女の温かさの両方に触れて、声を上げて泣いた。
泣いて、泣いて、泣きじゃくった。
一晩中、その看護師さんを交えて、僕らと彼らは、おばあちゃんという共通の「愛する記憶」を語り合った。社会の冷たさを知っているはずの僕たちが、初めて、この世界も捨てたものじゃないと思えた、そんな奇跡のような夜だった。